さようなら、2012年

あけましておめでとうございます。

 

すでに戻らない日々について、あきらめることが苦手です。

要は念じ方が足りないだけで、心から望めば、いつでもあの日に帰ることができるのではと。

 

年はあけましたが、2012年をいつでもやりなおせるような気分でいます。

 

 

さて、2012年はどんな一年だったでしょう。

 

新しい年にむけて気分を切り替えるためにも、この場をかりて、旧年を振り返ることをおゆるしください。宇宙飛行士の例を引くまでもなく、心をしずめるために行うデブリーフィングのような自己療法の一種とお考えください。

 

 

2012年1月 三重・桑名に帰省。母校の小学校で、運動場をかけまわる少年たちに「誰のお父さん?」と問われ、20余年の戻らない時の流れを知る。

 

2月 大杉栄『獄中記』の制作合宿、実弟と川の字で寝起きする。事務所が手狭なため、朝の7時から代官山蔦屋書店に入りびたる。昼も同店で食べる。作業がはかどるうえに、「いつもの二人組」と、同店スタッフにも顔が売れる。一挙両得。

 

同月21日 『大杉栄 日本で最も自由だった男』(河出書房新社)発売。「大杉栄のずるい本屋」と題した短い文章を寄稿。早稲田の大学院に論文を提出したばかりのO、芝居の台本も書く国営放送局勤務のKという同級生両君の知恵をかりる。

 

3月 『獄中記』に合わせて、既刊の『自叙伝』もカバーを新装。時間や友情だけでなく、デザインも、いつでもやりなおせる。そんな自分のわがままにつきあってくれる周囲の人たちに感謝。

 

4月17日 大杉栄をめぐる中森明夫 × 坂口恭平トーク in DOMMUNE。坂口恭平さんと初対面ながら、かぜで声が出せず、話もままならない。にもかかわらず、坂口さんが風を通してくれる。パリからお迎えの車がやってきたフランスの片田舎に住む「なまいきシャルロット」の気分。わかるでしょうか、このたとえ。

 

同月30日 大杉豊さんが語る「大杉栄の精神と行動」全40枚スライドトーク@千駄木・旧安田楠雄邸。30人ほどの大杉ファンが参集。大杉たちの同志茶話会を見習ってカレーでも振る舞いたいが、歴史的建物保護のため、お茶も出せない。せめて一人ひとりに声をかけて場を温める。

 

5月13日 これは出獄歓迎会ではない@代官山「M」。Pヴァイン創業者の日暮泰文さんが一夜限りのDJを、坂口恭平さんが大杉栄をめぐる新曲「魔子よ魔子よ」を歌う。クラブの喧噪のなかテンションの高い坂口さんから、新譜制作の構想を聞く。後日詳細を相談にいくが、そのときも再度のかぜで声を失い、ほとんど話にならない。が、風に乗って物事は進む。

 

6月19日 神山町のラトビア共和国大使館で『リガ案内』出版記念レセプション。会場のボールルームのくつろいだ雰囲気とは好対照に、街は台風直撃の暴風雨。タクシーを呼んで、来場者に帰宅をうながす。特命全権大使ヴァイヴァルス閣下は「来なさい」というように手近な数名を公用車に乗せて、暴風雨の街へ。大使の分け隔てのなさに感じ入ると同時に、欧米エリートの体力に舌をまく。

 

同月22日 坂口恭平ニューアルバム「Practice for a Revolution」の吹き込み。前夜も仲間たちと一夜を飲み、語りあかし、普通ならコンディションが危ぶまれるところだが、半身半馬の坂口さんは上半身もあらわに一息に11曲を歌い切る。録音の確認も含めて、きっかり2時間のレコーディング。終えてすぐ、首相官邸に対する反原発デモにくりだす。

 

7月 フランスから建築学生チャーリーくんが来日、土曜社に寄宿するのもこれで4度目。本名シャルリ・エドワルド・イヴ・ルイ・ファニエレと王侯の名前がつらなる。昨年の滞在時にモデルハントをことわってしまった雑誌 POPEYE のリニューアル号を彼にみせる。チャーリーによく似た男性モデルが表紙をかざっているので、彼のすがたを想像してみてください。

 

8月4日 坂口恭平ソロリサイタル@渋谷さくらホール。500人を超える同好の士とうちわを振って騒ぐ。恵比寿リキッドルームに場所を移したアフターパーティで総理みずからDJ。汗だくになりながら、「そう、これでいいんだ」と、えもいわれぬ満足感を味わう。

 

同月19日 新政府ラジオ「国際特番・坂口恭平ニューアルバムを語る」生放送。冒頭うまく映像が届かず、リングサイドから孤独なボクサーを見守るしかないような焦燥をおぼえる。後半、映像も回復し、坂口一家が勢ぞろいして大団円にむかう。最後の最後で、Mac Book Air を片手であやつりくりだされるマジカルな映像は必見です。

 

同月25日 『混乱の本質』発売。坂口恭平の「新政府」とジョージ・ソロスの「世界政府」を相次いで出版する振幅の広さが、自分のなかでは破綻なくちゃんと納まっている。

 

9月8日 ラトビア夜市@表参道 athalie。同店オーナーの平山寛子さんが「ただでもいいのよ」と出す私物の洋服・アクセサリーが祝祭感をもりあげる。ほとんど着られていないであろう欧州モードが全部千円。小学生の息子さんが忙しく店番をしつつ、自作の絵を200円で売る。

 

同月 チャーリーは帰国し、坂口さんは欧州から帰らず、自分は所在なく、いつのまにか受け身の姿勢に入る。日吉の大学図書館に通う毎日。18歳で上京してきたころの日々をやりなおす。下旬、逗子の海水浴に出かけ、葉山の賃貸を見つける。思えばここがターニングポイント。

 

10月 葉山に保養所開設。すぐオープンハウスしてお披露目すべきところが、もったいぶっているうちに秋も深まり、実施せず。春の海辺でパーベキューを企画しますからご期待ください。

 

11月 葉山でぬくぬくと読書三昧。ブログも更新せず、当ウェブサイトの来客数がじりじり下がっていくのを、他人事のように眺める。目先のことはあとに回して、遠いところから再開しようと決め、英国の書籍販売会社と契約をむすぶ。春から英文出版をスタートします。

 

12月 プラハのプロジェクトシンジケート本部から第二弾、第三弾の契約書が届く。振り返れば、この契約書を待ちわびるうちに、受け身になっていたのかもしれない。時期を同じくして、大手町の新聞社の記事審査の仕事が入る。

 

 

というような一年で、反省も何もなく、これ以外にありえなかったような気もしてきました。

 

本を手にとってくださった方、ウェブサイトを訪れてくださる方、気にかけていただいている方、イベントでお目にかかった方、あいさつすらできなかった方も含めて、同じ時代に生きる諸先輩がたと仲間たちへ、感謝の念力を送ります。

 

今年もよろしくお願いします。