
第6話 プライベート トップスタイリスト
いま、僕は自分の美容人生の頂点にいる。
プライベート トップスタイリストとして4年間、「口コミの紹介」や「自分が出会った人」だけしか、新規のお客さまはとっていないのだ。
決してお高くとまっているわけではない。
自分が提供するヘアデザインやサービス&ホスピタリティ――要するに「商品」としての自分の評価で、どれだけ「口コミ」を広げていけるのか、世の中に勝負を挑んできた。
というか、自分自身と闘ってきたのかもしれない。
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プライベート トップスタイリスト――こんな呼び名は世間はもとより、美容業界でも知られていない。
なぜなら、僕が確立した新しいポジション、しごとのスタイルだからである。
「トップスタイリストというのはわかる。でも、プライベートってなんだろう?」
という人が多いと思うので、説明させてもらいたい。
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簡単に言ってしまうと、「全部自分でやる」ということだ。
シャンプーからカット、そしてカラーをぬるのも、パーマを巻いたりも自分でおこなう。
その間にお客さまと会話をし、最後の仕上げまでも、アシスタントに任せず、全工程を自分が担当する。
お客さまが帰ったあとのカルテ管理も、もちろん、自分でおこなっている。
全部自分1人で担当するとはいえ、お客さまを1分たりとも待たせるわけにはいかない。
そこで、徹底した予約管理をおこなうことになる。
予約を受け付ける人数も、毎日8名から10名に限定する。
できるだけ、フロアの中に自分のお客さまが1人しかいない状況をつくる。
「1人のお客さまを最大のパフォーマンスでもてなしたい。」
「目の前のお客さまに完全集中したい。」
「僕が客だったらこんなふうにしてもらいたい。」
そんな願いを一つずつ形にして、プライベート トップスタイリストという働き方を編み出したのだ。
2011年9月3日
第7話「ある一日」につづく
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