
第4話 自由を手にする
15歳の春。
高校は、長野市内でも指折りの人気校にはいった。
なぜそこを選んだのか。
とにかく私服で通える学校だったし、なんだか自由そうだと、勝手にきめてしまったのだ。
中学3年の秋から、放課後も学校に残って勉強した。
夢中になると楽しくなってくる。
そうしたい、そうなりたい、手に入れたいと思うと、僕はなりふりかまわず、がむしゃらになってしまうのだ。
*
「ここは、いったいなんなんだ!」
入学してまもなく、特大のカルチャーショックに襲われた。
先輩たちがカッコよすぎるし、カワイイし、めちゃくちゃオシャレ。
「負けた」
オキシドールという薬品で頭は茶髪、眉毛も細く剃っていた。
格好は、カーハートのワークパンツに、腰に巻きつけたネルシャツ。
ファッションセンスは、だれにも負けない自信を持っていた……。
危機におちいったプライドを一刻も早く修復し、かならず自分のスタイルを確立してやる。
僕は奮い立った。
*
中学時代に坊主だったことは前に話した。
高校で髪型の自由を手に入れた僕は、まず、ボサボサに伸びきった髪をどうにかしたいと思った。
で、オシャレな先輩から、長野市内で一番オシャレとされる美容室を紹介してもらうのだが、その、美容室というより「サロン」との出会いが、僕を美容の道へといざなうことになるとは、だれが予想できただろうか。
2011年8月20日
第5話「俺、美容師になるよ」につづく


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