第14話 スタイリスト

 

 

 

 毎日、毎日アシスタントをし、モデルハントをし、怒られ、悩み、心も身体もボロボロになりながら、スタイリストになりたいという夢を追い続ける。

 そんないばらの道を通り抜けた者だけが、スタイリストになれるのだ。

 

 スタイリストになると、会社の待遇が全然違ってくる。

 

 一つは、自分の名刺である。そこにはスタイリストという肩書きとともに、自分の名前が刻まれている。

 

 アシスタントのころは、サロンのショップカードに自分の名前と連絡先を手書きし、名刺代わりにする。モデルハントで女の子たちに手渡すときも、肩身が狭い。

 スタイリストデビューした先輩から名刺を自慢されると、めちゃくちゃうらやましかったものだ。

 

 名刺に次いで嬉しいのは、自社のホームページに自分の顔、自己紹介とアピール、自分が作ったヘアスタイルを載せられることだ。

 

 併せてブログも与えられる。オススメのCDや映画、写真集、美術館、料理店など、美容の話題にかぎらず好きなことを投稿することができる。

 対外的にも、並みいる先輩スタイリストたちと同じ土俵に立つわけだ。


 ネット上で自分のことをアピールしていると、それを見て指名してくれるお客さまもいる。

 ぼくは、どんどん新しいヘアスタイルをアップしていった。

 

 デビューしたスタイリストが手に入れるものが、もう一つある。

 サロンのロゴが刻まれた会社支給のハサミだ。

 

 スタイリストとしてデビューするまでの数年は、1年目に自費で買ったハサミとセニング(すきバサミ)を使い続ける。

 

 スタイリストになったのだから気持ちもハサミも新たに、

 

「1人でも多くの人をしあわせにするぞ!」

「どんどん売れっ子になっていい生活がしたい!」

 

 などと、色々な願いをその真新しいハサミに託したものだった。

 

2011年10月30日

第15話「続スタイリスト」につづく

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